2019年9月22日 労災保険の支給制限
業務災害や通勤災害の発生について労働者に責任がある場合には、次のように保険給付の支給が制限される場合があります。
-
労働者が故意に負傷、疾病、障害、死亡又はその直接の原因となった事故を生じさせた場合
⇒ この場合には、政府は保険給付を全く行いません。 なぜなら、業務上の事由、又は通勤による災害とは考えられないためです。
-
労働者が故意の犯罪行為、又は重大な過失により、負傷、疾病、障害、死亡、又はその原因となった事故を生じさせた場合
⇒ この場合には、政府は保険給付の全部、又は一部を行わないことができるとされています。 具体的には、次の保険給付が対象となり、支給の都度所定給付日数の30%相当額を減額します。
- 休業補償給付、休業給付
- 傷病補償年金、傷病年金
- 障害補償給付、障害給付(再発に係るものを除く。)
なお、このうち、傷病補償年金、傷病年金と障害補償年金、障害年金については、療養開始日の翌日から起算して3年以内の期間に支給されるもののみが対象となります。
-
労働者が正当な理由がなくて、療養に関する指示に従わないことにより、負傷、疾病、障害の程度を増進させ、又はその回復を妨げた場合
⇒ この場合には、政府は保険給付の全部、又は一部を行わないことができるとされています。 具体的には次の保険給付が対象となり、事案1件につき、それぞれ次の支給制限が行われます。
- 休業補償給付、休業給付 … 10日分を減額
- 傷病補償年金、傷病年金 … 365分の10相当額を減額
なお、労働者が「自殺」をした場合は、原則として業務起因性が認められず、「故意による死亡」とされるため、業務災害とはなりません。 ただし、業務上の心理的負荷によって「精神障害」が発病した者が自殺を図った場合には、精神障害によって正常な認識、行為選択能力が著しく阻害され、又は自殺を思いとどまる精神的抑制力が著しく阻害されている状態で自殺が行われたものと推定されるため、業務災害と認められる場合があります。 また、労働者が遺書を残して自殺したという場合、遺書があるからといって正常な認識、行為能力が著しく阻害されていなかった、すなわち「故意」による死亡と判断することは、必ずしも妥当ではありません。
-
故意の犯罪行為
事故の発生を意図した故意はありませんが、その原因となる犯罪行為が故意であるものをいいます。 たとえば、道路交通法違反(信号無視、速度違反等)に故意がある場合等を指します。
- 重大な過失
- 踏切において一旦停止、通過電車有無の確認を怠ったため発生した電車との衝突事故
- 飲酒運転により発生した事故
- 居眠り運転をし、信号無視をしたために発生した事故