2019年8月28日 業務災害
- 業務災害の認定基準
業務災害とは、労働者の業務上の負傷、疾病、障害、又は死亡をいいます。 「業務上」とは、業務が原因となったことを指し、業務と災害(傷病等)との間に相当因果関係が存在することをいいます。 これを「業務起因性」といいます。 一般的に、業務災害と認められるためには、「業務遂行性」を満たした上で、「業務起因性」を満たすことが必要とされています。
- 相当因果関係とは、その業務をしていなければ、その災害(負傷等)を被らなかったであろう、という関係をいいます。 つまり、災害の原因として、業務を行っていたことを挙げることができる関係をいいます。
- 業務遂行性…災害時に労働者が、労働契約に基づき事業主の支配下にあること
- 業務起因性…その災害が、業務に起因して発生したものであること (事業主の支配下にあることに伴う危険が現実化したものであると、経験則上認められること。)
- 業務遂行性が認めにくい場合であっても、業務起因性が明確に認められるのであれば、業務災害として認定されます。 職業性疾病(職業病)などはその典型です。 つまり、業務災害の認定にあたっては、最終的に「業務起因性」の存否が問題となります。
- 業務上認定の具体的判断
-
事業主の支配下・管理下にあり、業務に従事している場合
これには、所定労働時間内や残業時間内に、事業場施設内で業務に従事している場合が該当します。 この場合の災害は、業務行為や事業場の施設・設備の管理状況等が原因となって発生するものと考えられるため、業務上と認められます。
また、就業中に生理行為(トイレに行く、水を飲みに行く場合など)や突発的・反射的行為(作業帽が風で飛ばされ拾う場合など)により、一時的に業務を離れるものについては、厳密には業務行為に該当しませんが、業務に付随する行為として、業務上と認められます。
ただし、次に該当する場合は業務上と認められません。
- 労働者が就業中に私的行為、又は業務を逸脱する恣意的行為をしていて、それが原因となって災害が発生した場合
- 労働者が故意に災害を発生させた場合
- 労働者が個人的なうらみなどにより、他人から暴行を受けて被災した場合
- 地震、台風などの天災地変によって被災した場合
- なお、上記 D. に該当する場合であっても、事業場の立地条件や作業環境等により、天災事変に際して災害を被りやすい業務の事情があるときは、例外的に業務上と認められます。 例えば、雷の発生頻度の高いうえ、はげ山であることから、落雷を退避する適当な場所のない山頂付近で作業をしていた現場監督員である労働者が、落雷の直撃を受けて死亡した場合などです。
-
事業主の支配下・管理下にあるが、業務に従事していない場合
これは、昼休みなどの休憩時間や就業時間前後に、事業場施設内にいる場合が該当します。 事業場施設内にいる限り、労働契約に基づき事業主の支配下・管理下にあると認められますが、実際に業務に従事しているわけではないため、その間の行為そのものは私的行為に該当します。 したがって、業務上とは認められません。
ただし、次に該当する場合は、業務上と認められます。
- 事業場の施設・設備や管理状況などが原因で、災害が発生した場合
- 就業中であれば業務に付随する行為と考えられる行為(生理的行為等)に際して、災害が発生した場合
【業務上の例】
- 事業場内の食堂の給食による食中毒
- 作業場内の岩石落下による死亡
- 道路の傍らで休憩中の、道路清掃作業員の自動車事故
- 屋外作業開始前の暖をとるための焚火による火傷
【業務外の例】
- 拾った不発雷管をもてあそんで起こした爆発事故
-
事業主の支配下にあるが、管理下を離れて業務に従事している場合
これには、出張や社用での外出など、事業場施設外で業務に従事している場合が該当します。 この場合には、積極的な私的行為を行うなど特別の事情がない限り、業務上と認められます。
なお、出張中は、私的行為(飲食、宿泊等)に際して生じた災害であっても、それが出張に伴う範囲内のものであれば、一般に業務起因性が認められ、業務上と認められます。
【業務上の例】
- 自宅から直接用務地に向かう途中で、電車にはねられて死亡
- 出張中の旅館における転落死
【業務外の例】
- 私用で催し物を見物し、その帰途において生じた自動車事故による死亡
- 業務上の疾病
業務上の疾病には、災害性疾病(事故による疾病のこと。例えば、不自然な作業姿勢から発生する災害性の腰痛など。)と職業性疾病(長期間にわたり業務に伴う有害作用が蓄積して発病に至る疾病のこと。例えば、一般的に「職業病」と呼ばれるものであり、じん肺など。)の2種類があります。 これらの業務上の疾病の範囲は労災保険法ではなく、「労働基準法施行規則(別表第1の2)」において規定されています。 当該別表の各号に掲げられている疾病のいずれにも該当しないものは、業務上の疾病とは認められません。